OHRIを訪問して

2005年6月、カナダのオタワにあるオタワヘルスリサーチセンターのアネット・オコナー氏のもとを訪問した際のレポートです。

2005年6月13-21日 カナダ(オタワ)

どんな国?

カナダは人口約3,140万人・面積約997.1万km2(世界第2位、日本の約27倍)・首都オタワ・1867年に4州の統合で成立し、現在は10州3準州から成っている国です。
立憲君主国としてエリザベス2世を元首とする英連邦の一員であり、民族は多種多様です。
公用語は英語と仏語で人口の約59%は英語、約23%は仏語を、残りの18%は二つ以上の母語を持ちますが、連邦からの分離独立を目指すケベック州などのように州ごとに異なる言語を定めているところもあります。
広大な土地と豊富な天然資源を有し、一次産品を多く産出。人口の約3/4が米国との国境約300km内に居住することも影響してか、経済的・文化的に米国との関係が密接です。
カナディアン・ロッキー、ナイアガラの滝、メープル街道やオーロラ見物、『赤毛のアン』のモデルとなったプリンス・エドワード島など大自然に触れる旅を求めて世界中から多くの観光客が訪れています。

どんな都市?

オンタリオ州オタワ。緯度約45度に位置し、日本の北海道とほぼ同位置にあたります。
1857年に英国領カナダの首都となって以来、政治・行政の根幹として機能し、国会議事堂をはじめ国立美術館や自然博物館など国の重要な機関が集まっています。
北側にはオタワ川を東西にはさみケベック州と隣接し、街の中心部を縦断するようにオタワ川から南へかつては軍事物資の輸送用ルートとして英米戦争の後に建設されたリドー運河が流れている、歴史ある美しい町並みです。

訪問の目的

2004年11月21日に開催された「聖路加看護大学 21世紀COE第3回国際駅伝シンポジウム」のパネリストとしてカナダのオタワヘルスリサーチセンター上級研究員アネット・オコナー氏をお招きしました。

21世紀COE国際駅伝シンポジウム 第3回「自分で決めた生き方を実践するために」

2004年11月21日(日) 聖路加看護大学内 アリス・C・セントジョン メモリアルホールにて開催されました。
アネット・オコナー氏の講演「難しい決断を迫られている人の援助」というテーマの講演です。
人生で起こる難しい決断の際に、この「意思決定補助ツール」を使用すると、選択肢の長所、短所、いい結果と悪い結果の確立、一番気になっていることを明確にすることができ、満足のいく決断ができるというものでした。

アネット・オコナー

(オタワヘルス研究所 上級研究員)

オタワ大学(カナダ)教授。オタワ・ヘルスリサーチ・インスティテュート所長。ヘルスケア・消費者意思決定サポート研究委員長(カナダ政府諮問委員会)。
患者それぞれが自分にとって最善の医療を選ぶための意思決定ツールの開発を推進している。
中国とチリのプロジェクトを支援するなど、国際的にも活躍。

オコナー氏は医療における「意思決定サポート」のプログラムを開発し、国際的な普及活動に携われている第一人者であります。
その先生のもとを訪ね、意思決定支援の先駆となっているカナダで、医療現場においてどのように実践的に患者あるいは一般市民に対してサポートを用いているのか、またどのように支援サポートを手掛ける人々を教育育成しているのかを学ぶこと。
また、滞在中にオコナー氏主催で毎年開かれている意思決定支援の国際的会議『3rd International Shared Decision Making Conference 2005』(6月14-16日オタワ大学にて)に出席し、会議のメイン・テーマでもある、「様々なケアシステムや文化をもつそれぞれの国で意思決定サポートシステムをどう用いられているのか」各国のパネリストの意見を聞き、日本との比較検討をすること。

訪問の記録


カナダの国会議事堂前で

ISDM会議の様子。
各国様々なパネリストが参加され、
有意義な討論が展開されました。

ポスタープレゼンテーションに参加。
好評でした。

滞在中いろいろとお世話になった先生と…

オタワホスピタル
(一見病院には見えない?!)

オコナー先生。
とてもチャーミングな方です。

病院図書館と、意思決定サポート実践センター入口

司書さん。
いろいろなアドバイスをしてくれます。

サポートセンターの一室。
ビデオ等の機材が置かれ、カウンセラーの養成に使用されていいます。

患者向け意思決定サポートビデオ。
それぞれの症状に応じた意思決定サポートビデオが用意されています。
驚き!(☆_☆)

オフの日。オコナー先生の案内でオタワ市内巡り。
とても落ち着いた雰囲気のステキな街でした。

訪問の感想

一般に開放されている病院図書館内に「意思決定サポート実践センター」が併設されていることで、誰でも気軽にサポートを受けられ、センター内には様々な症状に応じた意思決定関連の書籍やビデオが並び、またPCも設置されており、誰でも自由に利用することもできるので利用者が自分のニーズにあったサポートを得られることは大変重要だと感じました。
意思決定ツールもオコナー先生率いる研究チームによってより実用的に、より専門的へと日々開発・改良されています。その中の一環として現在Web上で病気や症状別の意思決定サポートツールが構築中です。それぞれの病気について各専門医からの説明や利用者が知り得たいであろう情報(副作用など)も提供されているので、利用者側もそれらの情報をもとに自分の気持ちや考えを明確に整理でき、適切な判断による意思決定が可能になると思われます。

滞在中にオコナー先生の計らいで、意思決定サポートを実践的に行っている看護師と話し合う機会を得ましたが、皆一様にして看護師による意思決定支援は、医療現場においてまだまだ未発達の領域で、特に医師との相互理解や連携が必要とのこと。
医師による一方的な医療処置ではなく、患者自身で決定した意思を反映した医療処置が施されるためにも、看護師による患者とのカウンセリングは望ましいとの意見が相次ぎました。
また医師の側からしても診断の前に看護師が患者とカウンセリングを行うことで、事前にその患者がどのような処置を望んでいるのか、完治、副作用、医療費など何に対して優先的に考えているのか等を知り得ることから、一人ひとりにあった処置方法を見つけることがスムーズとなるのではないでしょうか。