第4回たばこ対策研究会世界禁煙デー市民フォーラム

概要

会場の様子

開催日:
2004年5月31日
開催場所:
新潟県医師会館 3階大講堂

妊婦さんの喫煙問題をはじめ、たばこが女性や子ども達にもたらす影響について、産婦人科医の立場から多くのご講演をされている山形県の三條典男先生(新庄市)をお迎えしました。とても素敵な先生です。たばこを吸っている方も、吸っていない方も、これからの子ども達のために、美しいお肌と若さを保つために、この機会に一緒に考えてみました。

第1部

1)上越市の妊婦さんの喫煙実態

上越市健康づくり推進課 佐藤 麻由子氏

平成14年度に実施された上越市の妊婦喫煙実態調査結果をご発表いただきました。

7.4%の妊婦が喫煙(毎日または時々喫煙)し、その約9割が禁煙を希望していること、妊婦さん全体の6割が職場で受動喫煙を受けていること、受動喫煙やたばこの健康影響に関する知識が十分でないことが分かり、上越市では妊婦さんを対象とした禁煙支援、受動喫煙防止対策、健康影響に関する啓発普及が進める方針がとられているとのことです。

佐藤先生講演のスライドの一部をPDFファイルでご覧になれます。(343KB)

2)新潟県内における「看護職とたばこ」の実態

新潟県看護協会 たばこ対策研究会 清水 絵里子氏(糸魚川健康福祉事務所)
共同演者:新潟県看護協会 たばこ対策研究会
村山昌子、渡辺紀久代、風間栄子、斉藤長子、田中優子、中川之子、楡金末子(敬称略)
新潟大学大学院医歯学総合研究科国際感染医学講座公衆衛生学

新潟県看護協会では、喫煙率が高いといわれている看護職者の喫煙対策を進めることを目的に平成14年に行った「看護職とたばこ」調査の結果についてご発表いただきました。

喫煙率(女性18.3%、男性59.0%)を新潟県一般の方と比べると、女性看護師では3倍以上で看護学生の時期からはじめた人が多いこと、禁煙サポートの知識が十分でないことが明らかになりました。また、施設としては分煙対策をとっているところが多いのですが、分煙対策は守られにくいことも示されました。これらのことから、看護学生の時期からの禁煙教育と看護職者の禁煙サポート学習、施設における受動喫煙をなくすための具体的な対策の検討を早急に進めていくとのことでした。

3)心療内科における禁煙支援

オヤケ医院(新潟市) 斎藤 さゆり氏(心療内科・神経科)

心療内科の外来診療における禁煙支援の実態をご紹介いただきました。

心療内科的症状がメインなので、なかなか禁煙にもっていきにくいという困難な面があるとのことでしたが、およそ30%が禁煙に成功しているそうです。成功する方には、(1)「できるかどうか不安」、「だめなときは言う」など率直、(2)吸ったからといって投げない(良い意味で寛大)、(3)生活全体・人間関係や情緒面での安定、(4)「その他の」手段の探求に熱心、という共通点があったとのことです。禁煙サポートをフォローする中で、成功している場合には「おめでとう」、そうでないときは「またやり直しましょう」という支持的な関わりが大切であるという、実践に基づいた意味深いお話でした。

4)女性の口腔の健康

石井歯科医院(新潟市)石井 正敏氏

長く歯科の立場から喫煙問題に取り組み、禁煙支援も積極的に行われているという実践に基づいたお話しは、とても説得力がありました。

女性では、閉経後ホルモンバランスの変化によって骨密度が減少しますが、とくにタバコを吸えば吸うほど骨粗鬆症にかかりやすくなること、歯周病も骨粗鬆症によって進行が早まること、骨粗鬆症・歯周病の予防にはいずれも喫煙する女性は禁煙することが重要であることをわかりやすくご説明下さいました。美しさばかりではなく全身の健康の基になっている歯の重要性を改めて考えさせられるお話で、禁煙支援の動機付けとして活用していきたい内容でした。

なおご講演内容につきましては、ご著書の「女性のためのオーラルケア」(砂書房)もぜひご参照下さい。

石井先生講演のスライドの一部をPDFファイルでご覧になれます。(287KB)

第2部女性とタバコ~その害と禁煙について~

三條医院 山形喫煙問題研究会 三條典男先生

産婦人科を専門として開業していらっしゃる三條先生からは、女性の喫煙の影響、女性への禁煙支援、妊婦への禁煙支援の実際について、日々の診療での実践に基づいた、分かりやすいご講演をいただきました。

近年、男性の喫煙率が下がってきているのとは対照的に女性の喫煙率は、(60歳代以降の年代以外の全ての年代で、)特に若い年代で増加しています。しかしながら、女性の喫煙は、女性ホルモンであるエストロゲンが破壊され、卵巣機能が低下するため、メラニンの増加(シミが増える)、皮膚血流量減少による頭皮の脱毛(ハゲ)、コラーゲンの減少(深いシワ)等の、美しくない状態を引き起こします。これは日焼けの紫外線の数倍にあたる障害だそうです。

既に広く知られている妊娠期の喫煙の影響には、流産、早産、生出生体重がありますが、さらに、子どものその後の発達が悪いことにも影響があることが明らかになっています。妊娠は気づいた時には既に妊娠期に入っているため、妊娠可能な全ての女性は喫煙しないことが望ましいと話されました。

禁煙支援には、行動療法、薬物療法(ニコチン代替療法)と周囲のサポートが重要な要素です。

女性のための禁煙支援(妊婦を除く)で何より大切なことは、「一人ひとりの喫煙に関するバックグラウンドが違う」ことであり、喫煙動機、「喫煙」とは自分にとって何なのか、知識を十分にもっているかなどを十分に洗い出し、現在の喫煙状況、過去の喫煙状況(現在止めている人でも、補強していかないと再喫煙の可能性がある)を把握することが重要だそうです。若い年代の喫煙者に喫煙動機を否定するには、美容の面を説明する方が反応がいいそうです。

妊婦への禁煙支援ですが、前述のように、猶予はありません。最近は、妊娠期に喫煙することはよくないと広く知られているため、吸わないふりをしたり実際より本数を少なく報告することがしばしばあり、喫煙妊婦の洗い出し、特に初診時が大切ということです。

妊婦検診では、毎回喫煙状況を尋ね、禁煙継続者には「続いているね、えらいね。」と、喫煙している場合には「それでは、また始めてみましょうか。」と前向きな言葉を用い、動機付けを再補強するとともに前段から改めて始めていきます。動機付けの補強には、赤ちゃんにとってよくないことを強調しますが、近年では経済的な面で不安をかかえている人も多く、出産後のタバコ代の負担(1箱/1日、1年で約10万円!)に響く人も多いとのことでした。

ニコチン補充療法は、妊娠期の女性には使えないことになっています。どうしても禁煙できない妊婦が代替療法を希望した場合には、タバコに含まれるニコチン以外の有害成分を考慮すると、厳重な注意の下で使用することはできるのではないかと話されました。

最後に、WHOが紹介している、多くの保健医療従事者が実践する禁煙支援方法、SCRIPT(Smoking Cessation or Reduction In Pregnancy Treatment)、日本では高橋裕子先生(第3回新潟県タバコ対策研究会で講演いただきました)が主催され、主に禁煙した先輩がサポートするシステムを構築した「禁煙マラソン」が大いに成功を収めている(禁煙率6~7割)ことをご紹介下さいました。

三條先生講演のスライドの一部をPDFファイルでご覧になれます。(488KB)

総合ディスカッション

講演の後の総合ディスカッションでは、参加者のみなさまから疑問・質問を参加者の中で意見交換を行いました。

受動喫煙は、喫煙者が害をもたらしているのだから、加害喫煙、強制喫煙と表現した方がいいのではないか、というご意見、中学校予防教育をしているが、当初は「絶対に吸わない」と言っていた生徒も、高校生にもなると喫煙してしまうとのご発言がありました。くり返しくり返し、子どもに植え付けるような教育体制が必要であることを再確認いたしました。

事務局より

次回、第5回新潟県たばこ対策研究会では、「防煙」をテーマとした、あらゆる年齢層・生活の場においての取り組みについて、活発に情報交換ができる企画を計画しています。

ご講演下さいました三條先生、あいにくの天気の中新潟までお出でいただきありがとうございました。また第1部の講師のみなさま、貴重なご発表をありがとうございました。そして多くの参加者のみなさまには、この会で得た情報を活用し、今後ともに新潟の喫煙対策に取り組んで下さいますことを願っております。大変ありがとうございました。