平成16年度学長裁量経費 「教育プロジェクト事業」実施報告書

(平成173月提出)

 
プロジェク ト名:臨床化学系基礎実習への機器分析導入と独自教材開発

 
代表者:医学部保健学科検査技術科学専攻・教授 藤原直士

分担者:医学部保健学科検査技術科学専攻・助手 渡辺洋子

 

1.教育プロジェクト事業の 目的

 臨床検査技師教育では、講義や基礎実習とともに、病院等における臨床実習が義務付けられている。そのため、 教育機関において理論や基礎的技術を学び、医療現場で実践技術を習得することになるが、近年の医療技術の急速な発展に伴い、教育施設サイドの基礎教育、と りわけ、基礎実習教育において、内容の立ち遅れが懸念されるようになってきている。
そこで、本プロジェクトは、臨床実習での理解と学習効果の向上をめざして、これまで検査技術科学の基礎実習に組み込まれていなかった機器分析等の検査技術 や手法の導入をはかり、それら先進技術の基礎となる原理と基本技術を習得させることにより、基礎実習内容の見直しを進めることを目的とした。

 

2.実施内容

 本教育プロジェクトでは、臨床化学系実習(「病態化学分析学実習」)をモデル実習科目として、立ち遅れていた機器分析の導入をはかるため、以下の実習改 善プランを作成した。


実習改善プラン

対象科目「病態化学 分析学実習T・U」(専門教育科目、2単位)

(1)導 入する実習項目

  「機器分析システムの検査分析への応用」

  ・高速 液体クロマトグラフ法

    ・イオン選択電極法

    ・蛍光光度法

(2)導 入のねらいと期待される効果

  @導入を計画している分析法は臨床検査における機器分析として応用性の高い方法であ り、その原理と基本操作についての理解は、臨床検査技師として不可欠であると考えられる。

  A分析機器の構造を直接知ることができる。また、機器の取り扱い、分析操作上の注意、 測定データの解析について、実際に操作を行うことで、機器に対する“親しみ”を得ることができる。

  B微量分析等に使用する特殊な試薬や専用器具に ついて、実際に操作できる。

   C臨床の現場にある自動分析装置などブラックボックス的装置の内部に対する興味や理解を高める。

  D検査機器としてばかりでなく、研究用機器とし ての機器の利用への理解が深まる。

  E実習用教材、指導用資料を電子情報化して、教 育用資源として活用できる。

(3)導 入時期と実習時間および内容

  3年次 第1期および夏期集中実習

・高速 クロマトグラフ法:8時間

 高速液体 クロマトグラフ装置の原理と構造を理解し、血清中成分分析を行う。

 対象成 分: 尿酸、薬物

・イオ ン選択電極法:4時間

  イ オン選択電極による、血清電解質(Na+K+Cl-) の分析を行う。

・蛍光 光度法:4時間

  酵 素(デヒドロゲナーゼ)反応による血清中乳酸の蛍光光度分析を行う。

(4)導 入による教育効果の評価

  ・この基礎実習が臨床実習に役立ったかどうか学 生にアンケート調査を行う。

  ・学生の実習態度から、この実習プログラムに対 する興味を探る。

  ・レポートを精査し、指導効果を調べる。

  ・教育FDの テーマとして取り上げ、実習教育改善面からのレビューを受ける。

 このプランにしたがって、導入を予定した項目はすべて実習授業で実施した。高速液体クロマトグラフィーやイオン選択電極などを用いる機器分析における、 従来の比色法と比較しての利点を理解するとともに、機器の仕組みや操作方法について体験を通して理解させることができた。また、学生に実習の結果を発表さ せることで、データを伝えるための発表方法や、表現能力を高めるための指導も実施した。


3.プロジェクトの成果

 本プロジェクトの実施により、以下の成果を得た。

・新しい授業項目として、機器分析を用いた臨床化学分析を 導入することができた。

・機器分析に用いる機材、実習器具の充実を図ることができ た。

・今年度の実習授業で使用した資料やプロトコルなどを取りまとめて、実 習指導書(別紙資料1)を作成し、次年度以降の授業の教材とする。

・また、このプロジェクトによる実習授業を紹介するホークページ用のコンテンツ(別紙資料2)を作成した。174月に検査時術科学専攻のホームページにリンクした授業紹介として掲載する予定である。

 

4.今後の課題と取り組み

 本プロジェクトが目標とするものは、臨床化学における実習授業の改善であり、今年度以降もその成果を調査し、評価をしていく必要がある。とくに、この実 習を受けた学生の病院等での臨床実習における学習・理解については次年度のアンケートなどから追跡調査をしていく必要がある。また、次年度には、このプロ グラムで実習を行った学生に対して臨床実習指導に携わる病院検査部からの評価を受け、意見交換を行う教育FDを 実施する予定である。


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