第10回たばこ対策研究会2009世界禁煙デー 市民公開講座

概要

会場の様子

開催日:
2009年5月30日
開催時間:
13:30~
開催場所:
新潟市 ホテルディアモント

5月31日の世界禁煙デー前日の30日(土)に新潟市内のホテルディアモントにて、市民公開講座を開催いたしました。

今回の公開講座は、市民の方々にもっと禁煙治療を身近に感じていただき、一人でも多くの方が禁煙にチャレンジされることを願い、「禁煙治療ってどんなことするの?」をテーマとしました。サブテーマは「禁煙しようかな? と思ったらひとりで悩まずメディカルサポート!」です。

五月晴れの中、多くの方々にお集まりいただきました。

鈴木宏代表世話人からのご挨拶、共催の新潟県医師会より川室優理事のご挨拶に引き続き、事務局よりタバコに関する最近の話題提供を行いました。

次いで本日のメイン、「禁煙治療」のご講演と、禁煙経験談のご発表です。

クリニックにおける禁煙治療の実際とその効果

木口内科クリニック 木口俊郎先生

日本の喫煙者数は、男性は減少傾向を示しているのに対し、女性は変わらず、20代から30代の女性は増加しています。若い世代の女性の中には、タバコを吸うことでダイエット効果があり、太りたくないから吸っている方も見受けられます。また、タバコを止めない理由は、タバコをやめると集中力がなくなる、ストレスを感じるなどが挙げられます。タバコは明らかに有害であり、肺がん、心臓病、胃潰瘍などのリスクが高くなります。しかしこれらについて正しい知識が十分普及しているとは言えません。

クリニックにおける禁煙治療は、禁煙補助剤を処方し、医師とスタッフのアドバイスを受けながら禁煙を成し遂げることを目的としています。現在は、ニコチン依存症と診断され、ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200を超え、かつ、本人が禁煙を希望するという条件を満たせば、保険を適用して禁煙治療を受けることができます。禁煙治療には、皮膚からニコチンを吸収させ、離脱症状を抑えながら、禁煙を目指す貼り薬の「ニコチンパッチ(ニコチネルTTS)」か、脳内のニコチン受容体に選択的に働き、離脱症状やタバコに対する切望感を軽減することで、禁煙を促す飲み薬の「チャンピックス」のいずれかを処方し、12週間治療を行います。2007年8月1日から禁煙治療を施した140名のうち、ニコチンパッチによる成功率は68%、チャンピックスは76%となりました。12週間の治療を最後まで受けた中では、成功率はそれぞれ、90%と91%と高いものでした。

禁煙治療は、徹底した管理のもとで最後まで治療を行うことが成功につながり、薬の投与だけでなく、医師やスタッフによる生活相談が重要であると考えます。タバコを止めた人の90%は何回もチャレンジしているので、一回の失敗であきらめるのではなく、何回でもトライしていただきたい。

禁煙外来の実際

臨床検査技師 斉木久美子 様

禁煙外来を受診してもらうためには、まず禁煙に興味を持ってもらい、禁煙を希望するところから始まります。そのためにクリニックでは、禁煙治療の院内展示を行いパンフレット配布することで、禁煙治療の受診者を増やすよう努めています。

禁煙を成功させるためには、スタッフによるタバコの害や禁煙外来に関する丁寧な説明が大事です。また、アンケートやインタビューを通して、受診者の状況を十分に理解し適切なアドバイスを与えることが求められます。そして、禁煙を家族や友人に宣言することにより周囲の理解と支援を得ることが重要です。クリニックでは受診の最終日に、禁煙外来の修了書を手渡し、禁煙を継続する励みにしてもらっています。「やめたいのにやめられない」―禁煙外来はそのような方の強い味方です。

保険薬局における禁煙支援~氾濫する情報とモノ~

有限会社 共栄堂 共栄堂薬局 寺尾朝日通店 薬局長/管理薬剤師 伊藤健介先生

タバコの煙には、4000種類の成分が含まれており、そのうち200種類が体に有害であると判明しております。喫煙者の吸う煙を「主流煙」といい、火のついたタバコの先からでる煙を「副流煙」といいます。発生する有害物質は主流煙より副流煙の方が多く、副流煙と喫煙者が吐き出した「呼出煙」が、周囲のタバコを吸わない人にも影響を与えています。

国外で販売されているタバコのパッケージの警告表示ははっきりとした短い文章や写真、イラストでタバコの害についてのメッセージが一目でわかるように提示されている一方、日本国内の警告表示は小さな字の長文で表現も曖昧です。

現在、さまざまな禁煙グッズ(※)がマーケットに出回っておりますが、中には、正しい効用が期待できないばかりか、安全性が確認されていないものもあります。

※事務局注
パイポ、離煙パイプ、禁煙草、ネオシーダー、電子タバコ(実演あり!)等についてそれぞれご説明いただきました。

OTC(Over the Counter)医薬品の販売方法が法改正により6月1日より変わります。第1類以外の医薬品が登録販売者の配置のみで販売可能となりました。しかし第1類医薬品は薬剤師がいなければ販売できず、販売時には文書による情報提供が義務となっています。ニコチンパッチは第1類医薬品です。

薬局では「ニコチンパッチは自分の吸っていたタバコよりもニコチン含有量が多いみたいですけど?」、「パッチを捨てるときは何ゴミですか?」、「タバコをやめると太るの?」などお客様から寄せられる様々な質問に、薬剤師がわかりやすく説明やアドバイスをしています。

禁煙には、禁煙しようという意思がまず大事な一歩となります。失敗したら諦めることなく何回でもチャレンジしましょう。様々な情報やグッズが氾濫していますが、決して鵜呑みにせず、適切に判断してください。もし困ったことがあったら、迷うことなく掛かりつけの医師や薬剤師に相談をしましょう。

禁煙経験談

田邊健太郎 様

かつては、タバコが大好きで仕事が多忙ゆえに喫煙が唯一の息抜きであり、仕事の後もお酒とタバコで疲れをごまかすような毎日でした。そのため、体は常に重く、頭のどこかがいつも曇っているような状態でした。

そのような私が禁煙を決意したのは、6年前に開かれた職場の禁煙セミナーに参加したことがきっかけでした。その日のうちに、処方箋をもらい、ニコチンパッチを買い、禁煙をスタートしました。ガムを噛んだり、水を常に飲むようにしたりと禁煙によいといわれることは積極的に行いました。すると、ニコチンパッチを一箱半(3週間分)使ったところで離脱症状はおさまり、運動をしたくなる、気分が晴れ晴れとする、食べ物や空気がおいしくなるなどの変化が現れ始めました。それ以来、タバコを手にすることなく今に至っています。

この経験より、禁煙を考える人に三つのことをお伝えしたい。

  1. タバコをやめても失うものは何もありません。
    タバコをやめて失うと思い込んでいるものを数え上げるのは、禁煙できないように自分で暗示をかけるようなものです。
  2. 禁煙は難行苦行ではありません。
    禁煙により、運動ができたり健康を回復したりと得ることは多く、それらを楽しむことです。
  3. テクニックや周囲に大いに頼りましょう。
    禁煙は独力でやろうとせず、周囲のサポートや禁煙補助具(パッチなど)の力を借りましょう。

タバコを吸わないこと、本当に健康なことがどんなに素晴らしいことか、一人でも多くの禁煙を志す皆さんに実感していただきたいと心からお祈りします。

事務局より

当日は5月とは思えない暑い日でしたが、その暑さに負けないすばらしいご講演、ご発表をいただきました講師のみなさま、またせっかくのドライブ日和の中、2時間半という時間を一緒にすごしていただきました参加者のみなさま、ありがとうございました。

終了後のアンケートではすべての回答者の方から「とても参考になった」「参考になった」との高評価をいただき、事務局として大変うれしく思っております。

今後も市民公開講座やホームページを通じてみなさまに情報を発信していきたいと考えておりますので、これからもよろしくお願いいたします。