第6回たばこ対策研究会 喫煙防止(防煙)指導者研修会2005年世界禁煙デー市民公開講座プログラム―たばこ対策の今とこれから―

概要

会場の様子

開催日:
2005年5月28日
開催時間:
14:00~
開催場所:
新潟県医師会館 3階大講堂
共催:
新潟県たばこ対策研究会、新潟県医師会、新潟県歯科医師会、新潟県薬剤師会、新潟県看護協会、新潟県成人病予防協会、ノバルティスファーマ株式会社

1.たばこ対策:県内の新しい動き

(1)新潟県上越市「学校敷地内禁煙実施の取り組み」

上越市教育委員会 保坂裕子様

上越市教育委員会の保坂様より、上越市で実施された学校敷地内禁煙の取り組みについてお話いただきました。

「当市は平成12年度に健康シティ2010計画を策定し、健康づくり対策課を中心として実態調査を行ってきました。その結果が喫煙防止対策委員会を設立し、学校における喫煙防止教育の推進を行ってきました。をふまえ、平成14年3月には教育委員会平成15年度には学校敷地内禁煙に向けての方向性を教育長、教育部課長、担当者で確認し、平成16年8月に実施時期を決定、11月に『平成17年4月から幼稚園、小・中学校における校舎内(建物内)全面禁煙、同年9月から敷地内全面禁煙実施』との市教育委員会の方針を各幼稚園、小・中学校へ通知しました。通知に際しては学校側の負担軽減に配慮し、ステッカーや保護者・地域への協力依頼文例などを提示しました。実施後の反響としては、学校のみならず学校以外の集会場においても意識が生まれ、町内会での試みを検討する声も聞かれるなど波及効果もみられました。また教職員の禁煙も増えているようです。今後はより一層の推進に向けて、他の機関との協力のもと進めていきたい」とのことでした。

(2)済生会新潟第二病院「病院敷地内全面禁煙の取り組み」

済生会新潟第二病院 総務課長 安樂城亮様

済生会新潟第二病院総務課長の安樂城様より、病院敷地内全面禁煙の取り組みについてお話いただきました。

「当病院は平成15年から施行された健康増進法の施行に伴い、平成16年4月から建物内禁煙を実施、本年4月から敷地内全面禁煙を実施しました。病院の社会的使命として健康の維持・増進、最適な医療環境の提供があること、さらに職員の健康保持のためにも受動喫煙防止の徹底が必要ということが敷地内禁煙の理由です。病院敷地内禁煙の周知は、院内にお知らせの文書を掲示すると共に、各所に禁煙ポスターを貼付しました。また職員へも周知しています。敷地内禁煙実施から2ヶ月たった現状ですが、駐車場や植え込み、ゴミ箱等から吸い殻が発見されることもあり、車中喫煙や隠れ喫煙も行われているようです。事務職員が自主的に始めた"吸殻拾い隊"が喫煙者への声かけもしていますが、医師を含めた職員全体の意識向上が重要と感じています。今後は、敷地内禁煙の周知を徹底するために、ポスターの掲示、広報誌、インターネット、患者への入院時オリエンテーションや声掛け、職員意識の向上などを図り、いっそうの推進を目指していきたい」とのことでした。

2.講演会

「マナーからルール。そしてマナーへ。」―全国初路上禁煙条例への挑戦―

講師 千代田区生活環境課 小川賢太郎様

千代田区生活環境課の小川様より、全国初路上禁煙条例の実施について、お話いただきました。

「千代田区は、夜間人口4万人に対し昼間人口90~100万人というその地域性からゴミ問題は住民の深刻な悩みでした。対策として各種のPR活動を行ってきましたがほとんど効果がなく、マナーやモラルに訴える環境改善はもはや限界であると考えました。このような背景のもと、何が人々の行動を変えるかを熟考した結果、地域住民の悲痛な叫びに応えるためには罰則を導入せざるを得ないということに行き着きました。

条例策定にあたり、事前に意識調査、現地調査などさまざまな分析を行っています。現地調査として、ゴミの集まりやすい場所を、朝区職員が手分けして掃除してその状態を写真に撮り、同日の昼、夕、夜と経時的にカメラに納めるということを行ってみると、おもしろいことがわかりました。何もない場所に一番初めに捨てられるのがタバコです。タバコが何本か集まると、それより大きなゴミ(空缶やペットボトル)が捨てられ、その後さらに大きなゴミ(弁当ガラや新聞・雑誌など)が現れるというゴミがゴミを呼ぶ連鎖反応が起こってきます。これらのことからまちの環境を悪くしている根はタバコではという仮説"タバコ理論"をたてました。

罰則については、罰金ではなく科料としたことで非常に小回りがきき、実効性のある条例になりました。条例の効果については、定期的にポイ捨て吸い殻の本数を計測する"定点観測"によって評価していますが、全ての地域で条例施行前の10分の1以下という状況です。またタバコが原因の火災も半減しました。

この条例を実施していく上で最も重要なのは地域住民の参加です。町会、商店街、地元企業、大学、各種学校など地域のあらゆる人々が集い、地域全体でパトロール、PR、清掃活動などまちの環境改善に取り組んでいます。指定区域の設定についても、区が一方的に決めるのではなく、これらの活動に地域の協力が得られることが前提です。

今後の課題としては、過料の未納者対策や指定地区の拡大などが上げられます。今回、「マナーからルールへ」とあえて罰則を規定せざるをえませんでしたが、将来的には、本来の姿である、罰則などいらないマナーへの回帰が最大の目標です。

3.総合ディスカッション

総合ディスカッションでは講演内容についての質疑応答や情報提供、意見交換がなされました。

千代田区関連
千代田区周辺地区ではどのような反応があったか。
周辺においても条例を制定した区は存在するが、容易にはすすんでおらず、制定後にどのように実施していくのかが難しい問題である。
罰則規定に至った経緯について。
現場でのたばこの回収、ゴミ拾いへ参加させるなども案にはあったが、罰金の徴収を一本化して考えていた。その後、法的な部分を検討して、過料の徴収に変更した。
海外からの質問など、世界的に見たらどのような条例なのか。
世界的に見ても喫煙を禁止した条例は初めてのようであり、問い合わせもある。
将来的にどのような町にしたいのか。
たばこに限ったことではなく、都市環境に対するモラルの高い住民の町としたい。最終的には罰則がなくとも、たばこのポイ捨てをはじめとする、環境を損なうことが起きない意識づくりを広めていけたらと思う。
路上以外に施設等で禁煙の動きはどうであったか。
区立の小・中学校では敷地内全面禁煙とするなど別の領域でも対策がすすんでいる。
病院関連
入院時の患者に対しては、誓約書等において禁煙を伝達しているのか。
現状ではポスターの掲示や患者同士の口コミによる情報の伝達が主であり、今後検討していかなければならない課題の一つと考えている。
新潟県看護協会より
  • 看護従事者の喫煙率減少、看護学生教育、地域への啓蒙活動、禁煙支援研修会の実施等、看護従事者の喫煙状況および対策について発言があった。
  • 県内の取り組みについて
  • 県立高校の敷地内禁煙への取り組み、保健所での禁煙ステッカー配布について紹介があった。
  • その他の情報提供(会場よりアンケート用紙にて提供された県内たばこ対策情報)
  • 情報誌のお店の特集に店名や営業時間、駐車場の有無等の情報の末尾に、喫煙・禁煙の区別がついていた。
  • 県内の完全禁煙のお店 幸楽苑、ココ一番、栄助寿司、かっぱ寿司、スターバックスコーヒー
  • 瓢湖は公園内禁煙
  • 西新潟中央病院 4月1日から敷地内禁煙

4.会場の様子

一酸化炭素は有毒ガスですが、実はたばこの煙にもたくさん含まれています。たばこを吸っていると体の中に一酸化炭素が蓄積され、吐く息もよごれてきます。あなたの体はいかがでしょうか?

息の中の一酸化炭素濃度測定中

総合ディスカッション

参考図書コーナー

事務局より

講師のみなさま、また快晴のドライブ日和の中、県医師会館にお集まりいただきました参加者のみなさま、ありがとうございました。おかげさまでまさに世界禁煙デーにふさわしい公開講座となりました。

それぞれの分野で行動を起こされている講師のみなさまのお話は、圧倒されつつも「やってみようかな」「やれそうかも」と背中を押していただけるような内容でした。参加者の方々からも、これまでにないほどたくさんの「良かった」「ためになった」「大変参考になった」という感想をいただき、事務局としましてもとてもうれしく思っております。

ただ今回は例年に比べ参加者が少なく、この点は大変残念でした。ひとりでも多くの方に聞いていただけるよう事務局としても広報、会場等を検討しなければとあらためて感じました。よいアイディアがございましたら事務局までご一報下さい。

なお、会員登録されているみなさまにお願いです。新潟県は市町村合併が進んでおり、みなさまがご登録されているご住所の表示やご勤務先の組織などに様々な変更があるかと思いますので、その際はぜひ事務局までご連絡下さい。またご異動の場合もお願いいたします。研究会のご案内を確実にお送りさせていただくために、お手数ではございますがよろしくお願い申し上げます。