第5回たばこ対策研究会 喫煙防止(防煙)指導者研修会―防煙対策待ったなし!たばこに"NO"といえる気持ちを育てよう―

概要

会場の様子

開催日:
2003年11月8日
開催場所:
新潟県医師会館 3階大講堂
対象:
教育、医療、行政関係者、地域の青少年育成関係者

新潟県内でも学童・生徒の喫煙は大きな問題となってきています。子どもの喫煙を予防するために、学校・医療・行政・地域は今……。

1.あいさつ

代表世話人による研修会の趣旨説明と、中学校での喫煙防止学習の実施経験を盛り込んだ県医師会理事あいさつにより、研修会が始まった。

2.フリートーキング

まず参加者全員が8人程度のグループに分かれ、(1)これまで行ってきた喫煙防止活動、(2)現在感じている問題点、疑問、悩みなどについて自由に話し合い、その後グループ毎に発表を行った。活発な意見交換が行われ、予定していた時間を大幅に越えてしまうほど、内容の充実したものとなった。

3.ミニシンポジウム

喫煙防止教育に携わっていらっしゃる方4名より、発表をしていただいた。

1)学校と行政連帯による喫煙防止学習 学校保健委員会の取り組みから

上越市立大手町小学校 養護教諭 田中恵美子先生

大手町小学校では、学校保健員委員会と連携しながら、児童の喫煙防止のための教育指導を計画し活動している。学校保健委員会は教職員、児童代表、PTA、校医、民生委員(地域の方)など幅広いメンバーで構成されている。

学年毎に指導内容を変え、2、3年生では風邪の流行期に合わせてきれいな空気の大切さと換気の必要性、たばこの煙が周りの人に与える影響を学習し、4年生でたばこの害をテーマとして保健指導、6年生ではもっと具体的に害だけでなくたばこの広告を分析したり、たばこの誘いの断り方などを学習して知識と行動を結びつけていけるようにしている。また、これを参観日に親子学習会として行うことで、保護者の方の理解も得られるようにしている。

年2回開催している学校保健委員会では、平成14年度は、「たばこの煙から健康を守ろう」をテーマとした。第一回は、たばこの有害性や危険性を正しく理解する、学校・家庭・地域がみんなで喫煙に対する節度ある態度がとれるよう意識を高めることをねらいとした。内容は6年生の親子学習会で「たばこの正体知っていますか?」として、運動や学習、美容への影響など児童にとって身近な害を中心に取り上げた。また市の保健師による上越市の取り組みと実態調査結果の説明があり、喫煙防止は学校だけでなく地域で考えていく問題であることを伝えた。その他に、学校薬剤師によるお話、禁煙中の係長さんから禁煙の難しさについての体験談などがあった。子ども達は自由な雰囲気の中でたばこの害をなくすためにどうしたらよいか真剣に考え、ユニークなアイディアが次々とでてきた。また終わった後にニコチンパッチを家族にも勧めたいなどの感想もあった。

第二回では、授業参観で誘いの断り方のロールプレイを行った。また、グループワークで「喫煙防止の大切さを家庭や地域に伝えるにはどうしたらよいか」というテーマで話し合った。平成15年度の学校保健委員会では、そこで提案された「喫煙防止を地域に広めるための歌を作ろう」をテーマにサザエさんの曲を喫煙防止の替え歌で作り、行事の時に広めたり、家庭に発信している。

これらの活動を始めてから職員の意識も高まってきて、分煙もきちんと行われるようになった。昨年から、学校行事の時などは施設内禁煙になり保護者の方にも協力をお願いしている。

未成年者の喫煙は家庭や地域の環境からの影響が大きいと考えられる。学校の教育だけでなく行政との連携を密にして喫煙防止への意識を高め地域に生きる子どもを守っていくという考えを基にこれからの活動を進めていきたいと思う。

2)学校医による喫煙防止授業

新潟市立木山小学校学校医、やぎもと小児科 柳本利夫先生

小学校高学年を対象として、1年に1回テーマを決めて、学校医としての保健授業として喫煙防止の話をしている。また総合学習講師として、中学校三年生にたばこの話を行っている。児童生徒の感想文をみると、たばこの受動喫煙の怖さが分かった、将来絶対たばこを吸いたくないなど書かれており、喫煙の害についてよく理解しており、自分や家族の健康について考える機会になり、「将来自分は喫煙したくない。」という主体的な判断が得られたと思われる。

学校医による保健授業の歴史としては戦前では学校医の職務の中に「児童生徒への衛生講話」が入れられていたが、現在の学校保健法の職務執行の準則には児童生徒への健康教育の記載はない。むしろ学校医であるかどうかはこだわらず、地域医療に携わる専門職としてゲストティーチャーとして学習ボランティアの形で喫煙防止授業を展開していけばよいと考える。

日本小児科学会で平成11年12月に、「小児期からの喫煙予防に関する提言」が発表された。この中には小児科医の喫煙予防活動が提言され、幼児期からの喫煙防止教育の必要性や広告の禁止、自動販売機の規制などが示されている。小児科医として喫煙防止に関わる必要性を強く感じた。

3)地域医療と喫煙防止学習

新潟医療生活協同組合 木戸病院 保健師 来田麻里子先生

地域の病院として保健師のいる当院で行われている日常の診察の中での喫煙に対する取り組みとしては、健診受診者に対する禁煙への呼びかけや、糖尿病の教育入院の中でのビデオ学習に禁煙を取り入れたり、地域での喫煙率の調査などがある。1999年に禁煙外来を開設し呼吸器専門内科医によるサポートも行っている。地域への取り組みとしては、WHO世界禁煙デーである5月31日に病院の外来者にニコチン依存度のチェックやパンフレットの配付を行ったり、スーパーの一角で街頭健康チェックやPR活動などを行った。また地域の小中学校に喫煙状況の学校間の情報交換や、児童への喫煙防止指導のための講師の派遣など掲げて働きかけを行っている。

子ども達への喫煙防止学習の取り組みでは、地域の保健活動として夏休み子ども健康教室を開催した。内容は、身体計測、健康の話の他に、レクリエーション、手作り教室など子ども達が楽しめるものになっている。昨年と今年は、たばこがテーマになっていて、昨年はたばこの害が目で見て分かるように模型を使ったり、ミミズを使う実験を行った。このときの反省点として子どもの興味を引くことはできたがニコチンの依存性についての説明が不足だったと感じている。今年は「子ども達にたばこの真実を」という本を基に付属のスライドを用いて子ども達に説明した。

今後の取り組みとしてはこのような教室を続けていって子ども達が自らの体や健康について関心をもつきっかけづくりを進めていくとともに、子ども達自身がたばこに手を出さないように家族・地域が支えていくための環境づくりを行っていきたい。

このような活動の中で感じたことは、たばこが体によくないことは知っていても実際にたばことはどんなものであるのか知らない大人が多い現状があり、地域の大人がたばこをきちんと知ることが子供がたばこに手を出さない環境を作っていくことにつながり、また子どもがたばこを学習することで大人を禁煙へ促すことができるということである。

4)学校校地内の全面禁煙

妙高高原町教育委員会 教育委員長 平塚芳郎先生

妙高高原町の学校校地内を全面禁煙にという運動を平成14年4月1日から始めた。自分自身が教育委員長を引き受けるとき、喫煙をしている立場であった。学校校地禁煙という考えはこの時なかったが、教育委員長になるにあたって、自分は喫煙をやめるべきと考え、禁煙を始めたが、2年かかってもなかなか止められないという状態であった。しかしある時、たばこに対する考え方を正反対に改めなければ絶対に止められないという話を聞き、自分も「百害あって一利なし」と考えを変えるようになったとたん3ヵ月でやめることができた。以前までは少しずつ本数を減らしていけばいつかはやめることができるだろうという甘い考えであった。

平成14年に学校校地内全面禁煙ということを提案するにあたって、「全員が賛成をするということはない」、「現在喫煙している先生方への考え方はどうするか」など様々な問題が想像できたが、それを考えたらこの運動はいつまで経っても起こすことはできないと考え、喫煙している先生方もたばこに対する考え方が少しでも変わったり、校内でなく外に出て吸うようになるなど意識が変化することを期待して踏み切った。教員だけでなく校内に出入りする業者の方や学校行事でも保護者の方には校内で禁煙をお願いするなど協力を得ることができた。

校地内禁煙は校長という立場から進めにくいため、強行ではあったが教育委員会から働きかけるというのはとても効果的であったと考える。学校の先生は子ども達に、手を出していけない物事や、自分を危険にさらすものから身を守ることを教える立場であるため、自らもたばこをやめていく方向で考えていく必要があると思われる。

4.防煙学習用スライドデモンストレーション

当日配布した防煙学習用CDの説明を行った。

本CDには、小学生バージョン、中学生バージョンのスライド集や、その使用説明書、資料となるビデオ映像などが含まれている。

画像は、喫煙防止学習用スライド(当日CDにて配布)のデモンストレーション。

5.総合ディスカッション

再びグループ毎の自由な話し合いのほか、これまでに防煙活動を実践してこられた医師や現在生徒の喫煙に悩んでおられる生徒指導担当の先生からフロアへ貴重なご発言をいただいた。まだまだ話したりないというみなさまの気持ちを強く感じつつ総合ディスカッションは幕となった。

ポストイットに、問題点、疑問、
悩みなどを1枚に1つずつ記載。

会場後方のテーブルに、持ち帰り
自由のポスターや参考資料を提示。

スモーカライザーを用いた
呼気中一酸化炭素濃度測定体験

6.閉会のあいさつ

新潟県たばこ対策研究会では、平成16年度の世界禁煙デー前後に児童・生徒の喫煙防止をテーマとした市民公開講座を開催することをお知らせして閉会となった。

事務局より

多くのみなさまのご参加によりたいへんな充実した研修会となりました。もっともっと話をしたかったというご意見もたくさんいただき、これはセカンドステージを設定しなければと早くも来年度の計画を立て始めました。今回のテーマに関しては、子どもたちを取り巻く環境整備、効果的な喫煙防止学習法の開発と活用、すでに吸ってしまった子どもたちへの禁煙支援(子どものための禁煙外来)など、これから進めていかなければならない課題が山積みです。みなさまと力をあわせて行きたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。