第1回たばこ対策研究会

概要

会場の様子

開催日:
2001年11月10日
開催時間:
13:00~16:00
開催場所:
新潟大学医学部 大講義室

約80名の方にご参加いただきました。まことにありがとうございました。

1.新潟県たばこ対策研究会代表世話人の挨拶と会の設立趣旨説明

代表世話人:新潟大学大学院医歯学総合研究科 国際感染医学講座公衆衛生学分野 鈴木宏

喫煙は、肺がん、喉頭がんをはじめとする多くのがん、虚血性心疾患、肺気腫等様々な疾患のリスクファクターであり、一次予防の最重要課題として、対策の必要性が以前から唱えられています。我が国でも健康日本21にてたばこ対策を重点項目として掲げ、その推進が図られており、たばこ対策実施のニーズは現在急速に高まっています。

新潟県でも、病院における禁煙外来、学校における喫煙防止教育(防煙)、市町村における個別健康相談、民間団体による普及啓発活動など対策実施機関が増加しております。しかし、たばこ対策は「防煙」、「分煙」、「禁煙サポート」と内容も多岐にわたり、実施機関も前述のように多種であることから、個々の活動のみでは十分な効果をあげることは困難です。従って、今後分野を越えた連携体制が必須と考えます。

健康にいがた21においても長期目標のひとつに「喫煙による健康被害や環境被害がない新潟県(無煙環境の実現)」をあげており、関連機関および市民の関心も高まっている現在、これまで蓄積したみなさんの経験や情報を活かした統合的なたばこ対策を検討する時期にきていると思われます。

このような現状を踏まえ、新潟県のたばこ対策のすそ野を広げるとともに、たばこ問題を様々な視点から多角的に捉えた対策の実現に向けて重要な「関連諸分野の交流の場」として、本研究会を位置づけています。将来的には、情報収集・提供のみならず、人材育成やインターネット等を用いた普及啓発活動など、たばこ対策の核となる研究会を目指したいと考えております。

2.基調講演「たばこ」と肺がん

座長:新潟県医師会理事 渡辺悌三先生
講師:(財)新潟県保健衛生センター理事長 栗田雄三先生

肺がん死亡は現在年間5万人を超え、がん死亡の第一位を占める。肺がん対策は、一次予防としての禁煙と二次予防としての検診がある。受診率があがらない、早期発見、早期診断が難しい、がんが小さくても転移のある場合がある等々、検診のみで肺がん死亡を減少させるには限度がある。

一方肺がんの原因の70%はたばこであり、禁煙対策により欧米では肺がん死亡は減少傾向に転じている。我が国の喫煙率は先進国中で最も高くしかも若年者の喫煙が増えていることが問題である。

たばこの煙の中には20種類以上の発癌物質が含まれており、喫煙本数が多いほど、喫煙開始年齢が早いほど肺がん死亡の危険性は高くなる。また間接喫煙といってたばこの害は周囲の人々にも及ぶ。

たばこに含まれるニコチンには習慣性があり、やめることはなかなか困難である。たばこの害、禁煙教育は子供のうちから取り組む必要がある。

3.シンポジウムたばこ対策のとり組み

座長:鈴木宏

1)病院における取り組み

国立療養所西新潟中央病院呼吸器科 丸山倫夫先生(禁煙外来担当)

2)職域における取り組み

新潟県農業団体健康保険組合 三木扶久子先生

本健康保険組合はJAをはじめ、関連の81事業所、17,000人余の被保険者が加入している。被保険者の喫煙率は地域・年齢によって異なるが、全国・新潟県平均を大きく上回る。また職場内禁煙、分煙も取り組みが不十分なところが多い。禁煙・分煙対策に乗り出したきっかけは、健康相談で"職場内の副流煙を何とかしてほしい"という声が大きくなったこと、被保険者のがん死亡のトップが胃がんから肺がんになった(平成7年)ことである。

この5年間で実施してきたサポートは、1)職場内クリーン度マップ(たばこ対策状況)や「煙に巻かず考えてみようタバコシミュレーション」の作成と、健康管理委員会、健診時健康教育への活用、2)事業所健康学習会の重大テーマとして全事業所へ案内、3)事業所衛生委員会に職場内分煙への提案、4)健康相談時禁煙指導(CO濃度測定、ニコチェック)である。

以上を実施して、ア)禁煙希望者が多い、イ)喫煙者もクリーンな空気を望んでいる、ウ)禁煙に失敗し、これからの禁煙に自信を持てなくなっている喫煙者が多いことがわかった。職場内煙草対策の一環として管理者研修のテーマに「煙草の体に与える影響について」の依頼もあり、これらの結果を活かしたサポートを続けたい。

3)学校における取り組み

長岡立大島中学校 土田慶子先生

喫煙人口を減らすには喫煙防止教育にかかる部分が大きい。

学校教育では小、中、高校とも教科体育の中で喫煙・飲酒の予防を取り上げ、薬物乱用の問題と併せて実施している。さらに学級活動や総合学習で取り上げる学校もあるが、その実施には学校格差がある。

また、たばこの害はわかっても喫煙に走る生徒が後を絶たない社会的状況の中で、知識注入中心の指導法の見直しが求められる。

喫煙経験者の喫煙動機を見ると、1年生は興味、関心からが多く、2年生になると友達との関わりから、3年生ではストレスなどが加わってくる。

従って、知識教育に加え自分に自信が持てたり、自分の気持ちを表現できるような人とのかかわりができる支援が求められる。つまり、ライフスキル教育である。当校ではライフスキルの支援も含めたプログラムで実践しているが、その効果は非常に大きい。ただ、「行動」は家庭環境や社会環境にもかかわっており、学校では負いきれない部分が問題である。

4)地域における取り組み

三和村役場 住民課 福永紀子先生

三和村では、管内でも高い喫煙率、肺がん死亡の増加や住民のたばこに対する問題意識の向上などを背景に、平成12年度から包括的なたばこ対策の取り組みに着手した。本対策の特徴は、3本柱である「未成年者の喫煙防止(防煙)」、「分煙」、「禁煙サポート」について、既存の事業ともタイアップさせながら、ライフサイクル(世代)に応じた働きかけを継続的に行うという点である。

昨年は計画策定を行うとともに、新事業として禁煙教室を実施した。本年は基本健診時に家庭の分煙状況調査や成人式での新成人の喫煙率調査等に加え、新たに集落における分煙学習会を実施し、また防煙対策として小学校における「親子学習会」も予定している。

また、人材活用を本計画における第2の特徴としており、禁煙成功者(教室参加者)を「たばこ対策サポーター」として位置づけ、禁煙希望者への助言のみならず、前述の分煙学習会、親子学習会等でも起用し、高い評価を得ている。

4.質疑応答

三木先生に、県内の職域における対策の現状について

吸い殻ゴミの問題へのとり組みを、との提言

事務局より

第1回研究会には医療、学校、市町村関係者、学生・市民の皆様など多方面の約80名の方々にお集まりいただきました。不慣れな進行等でご迷惑をおかけいたしましたが、終了後のアンケートではたばこ対策への熱気が感じられるご意見が多数寄せられました。今回の研究会については「内容が充実していた」「各方面の取り組みが聞けて良かった」と事務局としてホッとするお言葉をいただくとともに、「討論時間がなかった」「受動喫煙、環境への影響の話が少なかった」「参加者が少ない」など課題となる点もご指摘いただきました。また今後の活動内容としても多くのアイディアをいただくことができました。「手伝えることがあれば声かけて」「地域をフィールドとして活用して」というお申し出もあり、この輪を広げて新潟県のネットワークづくりの第一歩にしたいと考えております。

まだ産声をあげたばかりの研究会です。こんなことなら力になれる、こういう企画に参加したい、ホームページを作るのが好き……など、われこそはと思う方はぜひ名乗りをあげて下さい。お待ちしております。新潟県たばこ対策のベースキャンプになれるようこの研究会を育てていきましょう。