ハンセン病問題について


 この病気が遺伝病ではなく感染症であることがわかったのが19世紀の末、日本国憲法に基本的人権がうたわれたのが1946年、ハンセン病の効果的な化学療法が開発されたのが1950年前後、世界ライ学会や世界保健機関(WHO)が隔離政策の廃止・通院診療が望ましいと公式な見解を出したのが1960年前後でした。しかし、隔離政策を根拠づけたらい予防法が廃止されたのは、1996年のことでした。およそ一世紀にもわたる不合理な絶対隔離政策による患者の人権侵害が、多年にわたって推進され、放置されたことに対する国の責任は、その5年後の2001年の熊本地裁判決の確定によって明確になりました。
 米国から「患者の権利」「インフォームド・コンセント」といった概念が日本に紹介されたのは1970年代ですが、ハンセン病の患者さんたちが人権擁護の運動を起こしたのは、それよりずっと前の1950年前後のことです。日本では、生命倫理・医療倫理のテーマとして、ハンセン病問題が取りあげられたことはほとんどありませんでした。

■ Leprosy: A Short History

世界保健機関(WHO)の支援を受けて,英国York大学の研究者らと取り組んできた,「ハンセン病の世界史」研究の成果です。


■『ハンセン病 重監房の記録』(集英社新書)

生命倫理の観点からこの問題に光を当て、時代状況や国際状況を背景に、日本のハンセン病政策の中にあった「精神」ともいうべき「罰するパターナリズム」をえぐり出そうと試みました。重監房のこと、ハンセン病問題のこと、多くの皆さんにもっと知ってほしいという気持ちで、分不相応ながら書きました。目次など、内容の構成はこちら


■ ハンセン病問題を語り継ぐ ~ 重監房の復元を求めて

入所者の高齢化が進み、この問題を体験した人々も、またこの問題の存在そのものも、社会から忘却されゆく恐れがあります。ハンセン病問題を永久に語り継いでゆくために何が必要なのか? 重監房復元運動は、まさにこの忘却への抵抗として位置づけられます。

 >> 栗生楽泉園・重監房の復元を求める会 のサイトはこちら


■ 重監房資料館について
私たちの願いが実り、2014年4月に国立の重監房資料館が作られ、そこに重監房の約半分の構造が実寸大で復元されました。夏季と冬期の両方の状況が体験でき、また映像資料、語り部の資料、発掘資料など、展示も非常に充実しています。ぜひ訪問してみてください。

 >> 国立重監房資料館 のサイトはこちら 


■ ハンセン病市民学会
ハンセン病問題についての「交流・検証・提言」を行う場として、ハンセン病市民学会があります。市民に広く開かれた「学会」です。運営委員として関わり続けています。






© Michio Miyasaka 2014