12-O-テトラデカノイルホルボ−ル-13-アセテ−ト(TPA)はマウスに対する塗布実験で、ジメチルベンツアントラセン(DMBA)の発癌性を増強することが示され、発がんの2段階説が提唱された。現在では、2段階説を発展させた多段階説が受け入れられている。この遺伝子傷害性を持つDMBAなどの物質をイニシエ−タ−と呼び、その作用を増強するTPAなどの物質はプロモ−タ−と呼ばれている。
プロモ−タ−類は一般に強い炎症性を持っており、炎症を介した細胞への刺激や増殖の亢進が、発癌性を促進すると考えられている。
TPAの細胞刺激は、増殖, 分化, アポト−シスの誘導、さらにサイトカイン産生をも誘導することが知られている。これらのTPA刺激による細胞の活性化の機序は蛋白合成や転写より検索され、新たに発現される遺伝子の種類も、解明されつつある。
TPAの細胞刺激が、増殖と分化の相反する活性を誘導することは、非常に興味深い点である。がん細胞には、がん遺伝子やがん抑制遺伝子の点突然変異による自己増殖性の獲得以外に、遺伝子組換えによる増殖関連遺伝子の活性化も知られている。また、分化した細胞が逆分化しないことは、転写制御の不可逆的変化が必須と考えられるが、遺伝子組換えもその要因になっていると思われる。
そこで、今回はTPA処理細胞の遺伝子組換え関連蛋白の発現の変化を中心に話題を提供する。
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