【エッジ法】
エッジ法によるMTFの測定手順の概略を図1に示す.特に今回はディジタルX線システム(FCR)でのMTF測定を行うので,それに沿って説明する.
図1 スリット法の測定手順概略
①エッジ
カッターナイフなどの簡便なものでもエッジ像を撮影することができる.撮影するときには,X線束の中心がエッジに対して垂直に入射するように配置にしなければ,正確なエッジ像が求まらないので注意する.
②特性曲線
アナログシステムについてはチャート法の説明・付録参照すること.ディジタルX線システムの特性曲線は,入力はX線量で出力はピクセル値で表わされる.この入出力特性は,ディジタル特性曲線と呼ばれており,ディジタル画像の解析ではピクセル値そのものを扱うことが多いため重要度も高い.ディジタル特性曲線では,通常,横軸は相対X線量,縦軸はピクセル値で表わされ,線形であるとされている.(アナログの場合は,縦軸が写真濃度であり,非線形であった).特性曲線の測定法のひとつとして,撮影時間を変化させることでX線量を変化させるタイムスケール法がある.この測定法は,撮影時間を大きく変化させるために相反則不軌(参照:チャート法の解説の最後尾)が問題となることが知られており,増感紙-フィルム系ではあまり用いられていない.しかし,ディジタルX線画像システムでは,X線検出器にフィルムを用いていないので,相反則不軌が問題とならない.したがって,ディジタルX線画像システムでは,タイムスケール法も距離法やアルミニウム階段を用いた方法と並んで有効な測定法である.ディジタル特性曲線からは,ダイナミックレンジ,システムコントラスト,入出力直線性,相対感度などを読み取る事ができる.
③線形化
チャート法,スリット法の説明参照.ディジタル特性曲線を用いること以外は同じ.
④ESFの微分
ESF(edge spread function)は,エッジ像のピクセル値のプロファイルと考えて良い.このESFを微分することでLSFを求めることができる(図2).ディジタル画像では,微分をピクセル値の差分で置き換えて用いることが多い.
図2 ESFとLSF
ディジタル画像のMTF測定では,エリアシングエラーを防ぐために合成LSFを作成して用いる.サンプリングピッチを仮想的に小さくする事でより詳細なLSFを得る.一般的にエッジ法では,エッジを3°程度傾けて撮影を行う.そして,傾いたESFを微分してLSFに変換後,LSFの合成を行う.傾いたエッジ像であるために,得られたLSFのアライメントは上下数ピクセル分のLSFと若干ずれることになる(図3のA~E).つまり,これらのずれたLSFから図3右の1~25のような順でLSF値をとることで,仮想的にサンプリングピッチを小さくした合成LSFが得られる.図3の例では,原画像が100μでサンプリングされたとすると,合成後のサンプリングピッチは100/5=20μになる.
図3 LSF合成例とその意味
⑤LSFのフーリエ変換
スリット法の説明参照.
ディジタル系のMTF
アナログ系(増感紙-フィルム系)のMTFは,通常,X線管からフィルムに至るまでの各部位での入出力特性を合計したオーバーオールMTFで表わされることが多い.一方,ディジタル系のMTFは,X線検出器のMTF,サンプリングアパーチャのMTF,画像処理のMTF,ディスプレイ部のMTFなど各部位で個別にMTFを測定する場合もある.これらの中で,特に,X線検出器(イメージングプレートなど)のボケとサンプリングアパーチャのボケを含んだMTFをプリサンプリングMTFと呼び,一般的にこのプリサンプリングMTFがディジタル系のMTFとして測定される(注:ディジタルMTF≠プリサンプリングMTF).プリサンプリングMTFは,ディジタル系に固有な解像特性を表わすMTFであり,増感紙-フィルム系や他のディジタルX線画像システムとも比較が可能であることから,最も信頼性の高い解像特性の評価法であるとされている.図4は,ディジタルX線画像システムに存在するいろいろ構成要素とそれらに対応するMTFを示している.
図4 ディジタルX線画像システムに存在するいろいろ構成要素とそれらに対応するMTF
こうしたディジタルX線画像システムのオーバーオールMTF(MTFoverall(u,v))は,次の式によって表わされる.u,v は空間周波数を表わし,*はコンボリューションを示す.
MTFA(u,v) :ディジタル化される前のアナログ成分(X線検出器など)のMTF
MTFS(u,v) :サンプリングアパーチャのMTF
MTFF(u,v) :画像処理のMTF
MTFD(u,v) :ディスプレイ部のMTF
★プリサンプリングMTF=MTFA(u,v)×MTFS(u,v) ←上式中の[ ]の部分
★ディジタルMTF=プリサンプリングMTF * くし形のサンプリング関数(コーム関数)のフーリエ変換 ←上式中の{ }の部分
実験1: エッジ法でMTF(プリサンプリングMTF)を測定してみよう |
【目的】 エッジ法によるMTF測定法を習得する. 【手順】
![]() (注記)Ⅱ.右に90度回転させる はImage → Transform → Rotate
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実験2: X線量に変換しないで,画素値をそのまま使ってMTFを測定してみよう. |
【目的】 ディジタル系X線システムの線形性を確認する. 【手順】
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