10.画像解析(応用編)

 

演習10-1: X線写真から骨塩量を測定してみよう.

【概説】

 写真濃度の解析を行う場合,組織が均一で厚さのみがさまざまに変化する参照体を被写体と一緒に撮影し,被写体の不透明度を参照体の厚さとして表すのが一般的である.骨塩量の測定にあたっては,参照体の材質としてAl(アルミニウム)が用いられる.これは,X線の減弱に関してAlが骨と非常によく似た性質を示すからである.ただし,人間の骨を測定対象とするときにはかなり厚いAlが必要となるため,参照体が大きくなり,部位によっては扱いづらくなる.その場合には,Cu(銅)を用いることもある.この演習では銅の参照体を利用している.参照体の形状としては,階段状のもの(ステップウェッジ)が利用される.Al製とCu製のステップウェッジの一例を示す.Alステップウェッジは2mm〜16mm,2mm間隔8段のものである.Cuステップウェッジは,厚さ0.04,0.08,0.12,0.20,0.40,1.00mmの6段からなっている.このような参照体を利用して得た骨塩量は,AlやCuの厚さとしてmmAl当量やmmCu当量といった単位で表される.

 左:Al製,右:Cu製

 

【測定法】

 骨塩量の測定は,参照体のそれぞれの厚さと画素値の関係を調べ,骨塩量を求めようとする部位の画素値を参照体の厚さに対応づけることで行うことができる.参照体の厚さと画素値の関係は,撮影されたステップウェッジの各段の濃度を調べ,各段の厚さとの相関を示す近似式を求めることで得る.ステップウェッジの濃度を調べるのはScion Imageで行うことができ,近似式はExcelを利用して求めることができる.近似式が求まったら,調べたい部位の画素値を近似式に入力することで,骨塩量を推定することができる.

 

使用する画像: Cu製参照体を同時に写した下顎臼歯部のX線写真3枚(同部位):

 

  画像例

 

画像中の上辺にステップウェッジが写っている.Cuの厚さは,左から0.04mm,0.08mm,0.12mm,0.20mm,0.40mm,1.00mmに相当する.

 

【ヒント】

・ステップウェッジの各段の平均濃度を調べるときは同じ大きさのROIを利用するとよい.また,その際,参照体の厚さ0mmの部分つまり背景部の濃度も測定する必要がある.

・Excel上でプロットした点(散布図)から近似曲線を求めるには,メニュー「グラフ」→「近似曲線の追加」を選択すれば良い.

・近似式を求める際は,桁数を増やしたほうが最終的な推定値の精度がよくなる.(推奨:指数形式で小数点以下10桁を表示)

 

【レポート】

・一連の方法をまとめる.

・各画像ごとに測定結果を数例示す.

・写真濃度と測定結果との関係を考察しまとめる.