研究紹介

 

●研究紹介(2016/05/06) 小林 恵子 教授 関  奈緒 教授 小笠原映子 准教授
 
齋藤 智子 准教授 成田 太一 助教 堀田かおり 助教
 
●研究紹介(2016/02/04) 内山美枝子 教授 李  鎔範 准教授
 
●研究紹介(2015/10/22) 和田 眞一 教授 大久保真樹 教授 成田 啓廣 助教
 
●研究紹介(2014/05/30) 高橋 益廣 教授 成田美和子 准教授
 

研究紹介(2016/05/06)

研究テーマ

コミュニティ参加型研究(Community-Based Participatory Research)

メンバーと主な研究テーマ

小林恵子教授    :地域看護に関するアクションリサーチ、子ども虐待事例のケアに関する研究
小笠原映子准教授 :在宅看護におけるケア情報の共有に関する研究、職域メンタルヘルスに関する研究
齋藤智子准教授   :保健師の専門能力および地域保健活動の質向上に関する研究
成田太一助教    :精神障害者の地域生活の現状と支援に関する研究
堀田かおり助教   :高齢者の孤立予防に関する研究

コミュニティ参加型研究(Community-Based Participatory Research)例の紹介

 これまで研究メンバーは、コミュニティ参加型研究として、「行政、地域住民との協働による健康づくりの推進」や「保健所・市町村保健師との協働による支援方法の検討」などの研究を実施してきました。コミュニティ参加型研究とは、地域の健康課題を解決し、地域の健康と生活の質を向上するために、地域の人々と専門職、研究者のパートナーシップによって行われる取り組み・活動です(CBPR研究会,2010)。

 今回はその一例として,新潟市西区で行った「地域住民、行政、大学との協働によるひとり暮らし高齢者の孤立防止対策の構築」についての概要をご紹介します。地域(実践者・地域住民)と研究者との協働に関心をお持ちの方はご連絡をお待ちしています。

地域住民、行政、大学との協働によるひとり暮らし高齢者の孤立防止対策の構築

1) メンバー紹介
大学:小林恵子教授(代表者)、関奈緒教授、小笠原映子准教授、齋藤智子准教授、成田太一助教、堀田かおり助教
行政:新潟市西区役所健康福祉課、黒埼地域保健福祉センター、西地域保健福祉センター

2) 研究内容
 本研究では、地域住民と行政、大学の協働のもと地域における効果的な高齢者支援対策立案に向けて、一人暮らし高齢者の生活状況と孤立の実態及び支援ニーズを明らかにするとともに、高齢者を支える地域の支援体制確立を目指しています。具体的には、一人暮らし高齢者を対象とした訪問調査を実施するとともに、それらの結果を踏まえ、地域住民への普及啓発用媒体の作成や、地域住民や保健福祉関係に携わる行政担当者等を対象とした話し合いを実施し、地域で効果的な高齢者支援対策について検討を進めています。

3) 調査結果

(1)初回調査の実施(平成25年度)
 初回調査では、75歳以上のひとり暮らし高齢者のうち介護保険サービス受給者等を除く237人を対象に 保健師・地域包括支援センター職員が、家庭訪問により生活および孤立状況や支援ニーズ等の聞き取り調査を実施し、協力の得られた195人(男性24%、女性76%)を分析対象としました。

①近所付き合いの程度
 女性では「自宅に行き来する付き合い」と答えた割合が最も多く、男性は「あいさつする程度」の割合が最も多い状況がみられました。

②ソーシャルサポート
 サポートが得られる人が多数を占めますが、男性が女性に比べてサポートを得にくい状況がみられました。

 

③初回調査のまとめ
 男性は女性に比べて、近所付き合いが少なく、ソーシャルサポートも得にくい状況でした。また、社会的役割がある人の方が、生活満足度が高い状況がみられました。高齢者が生活の中で何らかの役割をもち、互いに気遣い合う関係性を築くことが重要と言えます。

(2)1年後調査の実施(平成26年度)
 平成26年度には、反復調査として初回調査に協力の得られた195人を対象に1年後に訪問調査を実施し、孤立の実態と活動能力・ソーシャルサポート及び日常生活における支援ニーズ等の変化について検討を行いました。

①要介護状態の変化
 初回調査では、「要介護認定なし」の方でも1年後調査では、6%の方が「要支援」に変化していました。

②「孤立」に変化した人の特徴
 全員が友人の家を訪ねたり、家族や友人の相談にのったりするなどの「社会的役割」の得点が低いことが特徴的でした。

③「孤立」に変化した方や「孤立」したままの人の背景や要因
 初回調査から1年後調査で「孤立」に変化した人や「孤立」したままの人には、背景や要因にいくつかの特徴がありました。

④1年後調査のまとめ
1年という短期間であっても要介護状態への移行や生活機能の低下がみられました。また、体調や役割等のわずかな変化が親族や近所との交流頻度(孤立)に影響しており、高齢者がお互いに役割をもち、日頃からゆるやかな交流を心がけていくことで、孤立の防止や改善につながることが示唆されました。

4) 地域活動への発展

(1)専門職インタービューの実施(平成25年度)
初回調査の結果を踏まえ、専門職を対象としたグループインタビューを実施し、地域の独居高齢者の孤立防止に向けた健康や生活上の課題と対策について検討を行いました。

 

(2)地域住民との話し合いの実施(平成27年度)
  これまでの調査結果を踏まえ、一人暮らし高齢者が別居家族や近隣・友人とのゆるやかなつながりをもちながら、自分らしく暮らしていけるための効果的な支援の方法と対策を具体的に検討するため、民生委員や自治会代表者など地域住民を対象とした話し合いを進めています。

5)地域住民への普及啓発のために作成したリーフレット

(1)初回調査のまとめ(H26年度)

(2)1年後調査のまとめ(平成27年度)

 

6)これからの展望
今後、地域ケア会議等における地域住民を対象とした話し合いを継続し、高齢者の孤立防止に向けて、「地域住民が取り組めること」、「専門機関や行政機関が取り組むこと」について検討していきます。また、対象を拡大し高齢者のみ世帯の生活状況と孤立の実態と支援ニーズについても明らかにしながら、地域で具体的な活動を展開していく予定です。

主な研究業績

 1) 学会発表
小林恵子,成田太一,齋藤智子,伊藤由香,関奈緒.75歳以上の一人暮らし高齢者の孤独感の実態-社会的役割、ソーシャルサポートとの関連.第73回日本公衆衛生学会総会(栃木).2014.
成田太一,小林恵子,齋藤智子,伊藤由香,関奈緒.75歳以上の一人暮らし高齢者の孤独感の実態-IADL、外出、交流との関連.第73回日本公衆衛生学会総会(栃木).2014.
伊藤由香,小林恵子,齋藤智子,成田太一,関奈緒.一人暮らし高齢者の孤立防止のための地域支援体制構築に向けた取り組み.第73回日本公衆衛生学会総会(栃木).2014.
齋藤智子,小林恵子,成田太一,伊藤由香,武田伸子,関奈緒.75歳以上の一人暮らし高齢者の1年後の生活機能の変化.第74回日本公衆衛生学会総会(長崎).2015.
成田太一,小林恵子,齋藤智子,伊藤由香,武田伸子,関奈緒.75歳以上の一人暮らし高齢者の1年後の孤立状態の変化.第74回日本公衆衛生学会総会(長崎).2015.

2) 学術論文
小林恵子,齋藤智子,成田太一,秋山美香,相馬幸恵,石井恭子,児玉恵子,八子円.地域看護診断実習と連動した保健所,市町村,地域住民との協働.保健師ジャーナル,72(1);60-65,2016.
小林恵子.子ども虐待事例検討会の実践による保健師の意識と支援の変化-アクションリサーチを用いて-,日本看護研究学会雑誌,34(2),131-142,2011.
齋藤智子,成田太一,小林恵子,相馬幸恵,児玉恵子,秋山美香,石井恭子.漁村地域に暮らす住民の食品摂取の多様性の実態と保健活動の方向性.新潟大学保健学雑誌,12(1);21-28,2015.
成田太一,小林恵子,齋藤智子.離島漁村に暮らす住民のソーシャル・キャピタルの実態と保健活動の方向性.日本地域看護学会誌,18(1);82-91,2015.

研究紹介(2016/02/04)

研究テーマ

『快・心地よさ』を重視した看護ケアの開発

メンバー紹介

教員:

内山美枝子(看護学分野)
李 鎔範(放射線技術科学分野)

はじめに

私たちは侵襲のある検査や治療における心身の負担を減らす介入方法として、「快適さ」「心地よさ」を取り入れた介入を行います。その介入により治療や検査における心身の負担が少なくなり、検査や治療効果の増大を目指しています。

研究背景

現在取り組んでいるテーマはマンモグラフィ時の心身負担に影響する要因についてです。 マンモグラフィは、内外斜位撮影(MLO: mediolateral oblique)と頭尾撮影(CC: craniocaudal)の2方向で撮影されます。また,乳房の圧迫以外にも首のひねりや腕を挙げた状態での固定などポジショニングにより苦痛も加わります。より診断に適した画像を撮るためには、こうした固定やポジショニングは必要です。しかし、撮影技術などが進歩する一方で、受検 者側の身体的・精神的な苦痛については、ほとんど改善がなされていない現状です。 そこで、我々は、受検者の立場から画像の質に影響する因子について検証することを目指し、乳房X線画像検査時のポジショニングで生じる身体的精神的負担の定量化の基礎的研究に取り組んでいます。これらは、放射線技術科学と看護学の領域における共同研究で行っています。

マンモグラフィポジショニング時の生体反応を測定している場面
(平成26年8月撮影)
マンモグラフィポジショニング時の実験風景
(平成25年8月撮影)

 

研究内容の紹介

マンモグラフィ受診者の撮影ポジショニング時における身体・心理的負担の実証を行い、その基礎的調査から看護ケアの介入方法を検討していきたいと考えています。

基礎的調査1

マンモグラフィの撮影ポジショニングが筋活動と痛みに及ぼす影響

目的

マンモグラフィの撮影ポジショニング時における筋活動に着目し、表面筋電図を用いて、筋活動と痛みとの関連について明らかにすることを目的としました。

方法

マンモグラフィ撮影下の内外斜位撮影(mediolateral oblique:MLO)と頭尾撮影(craniocaudal:CC)の左右2方向における,撮影開始から終了までのポジショニング時の筋活動を測定しました。 測定した筋群は、上腕二頭筋(Biceps)、僧帽筋(Trapezius)、胸鎖乳突筋(Sternocleidomastoid)、さらに直接撮影に関連しない腓腹筋(Gastrocnemius)です(図1)。

マンモグラフィのプロセスを3区間に分けて、その区間の筋電位を比較することで筋活動量の変動を検討しました(図2)。

結果

ここではMLOの結果を示します。 各筋群における区間筋活動量について 筋活動量は、いずれもPP区間で高値でした。特に、撮影側の僧帽筋,撮影と反対側の上腕二頭筋、撮影側の上腕二頭筋の順に高値を示しました(図3赤丸で示した身体箇所が高値の箇所)。すべての区間と筋群で基準値より差が認められました(図4)。 いわゆる基準値よりもマンモグラフィのポジショニング時には測定した筋群の活動は増加していたと言えます。

結論

MLOの場合

筋活動量は、僧帽筋(撮影側と撮影反対側)、上腕二頭筋(撮影側)の順に高値でした。 筋活動差について撮影前と比較した結果、撮影側のすべての筋群(上腕二頭筋・僧帽筋・胸鎖乳突筋・ 腓腹筋)の筋活動と反対側の上腕二頭筋で有意差を認めました。 マンモグラフィ時には中等度から強度の痛みと痛みの部位は圧迫されている乳房以外の身体部位も示されたことから筋活動量の増加と痛みの増強の相関も認められたことから筋活動の増加と痛みは関連している可能性が示されました。

基礎的調査2

マンモグラフィ撮影ポジショニングが自律神経機能に及ぼす影響

目的

マンモグラフィの撮影ポジショニング時の身体的・心理的負担を実証的に明らかにするために、自律神経機能評価として、心・血管系自律神経機能検査の一つである心電図R-R間隔変動を用いて、副交感神経と交感神経の基礎データを収集・分析することを目的としました。

結果

マンモグラフィ撮影時の経時変化では、撮影開始91~120秒を境に,HF(副交感神経指標)の上昇とLF/HF(交感神経指標)の下降がみられました。 撮影前から、LF/HFが高値を示していることから交感神経が優位な状態であることが示され、マンモグラフィ時の心理的負担の要因は、乳房圧迫による痛み以外の要因が関与しているのではないかということも考えられました(図6)。


マンモグラフィ撮影時の自律神経機能指標の経時変化

これからの展望

乳がん検診は乳がん検診の標準的検査方法です。乳房を圧迫する以外にも受検者にとって負担を明らかにしたうえで、負担軽減のための介入方法を探ることができると考えています。 現在、私たちは今までの基礎調査を基に、マンモグラフィ時の負担軽減のための介入方法の検証を始めています。 例えば、味覚、視覚、聴覚を用いた負担軽減のための介入方法などです。

マンモグラフィ時に映像(視覚)を用いた場合の実験場面(平成26年9月撮影)

研究業績

マンモグラフィポジショニング時の身体筋活動の測定,内山美枝子,李鎔範,風間清子,皆川靖子,蔡篤儀,佐山光子,日本放射線技術学会雑誌,67(6),679-682,2011.

Measurement of muscle activities for evaluating physical burden and pain during mammography positioning.,Uchiyama M, Lee Y, Sadakata M, Sayama M, Tsai DY.,Tohoku J Exp Med.,228(1),53-58,2012.

Effects of mammography positioning on the autonomic nervous function,Uchiyama M, Lee Y, Sadakata M, Tsai DY., Mitsuko Sayama,Health,5(8),1335-1341,2013.

The Experience of Mammography Based on the Memoirs of Examinees, Uchiyama M,Health,6(11),1310-1314,2014.

Pupil size measurement and sucrose ingestion during mammography.,Lee Y, Uchiyama M, Sumiyoshi T,J. Biomedical Science and Engineering,8(10),700-706,2015.

研究紹介(2015/10/22)

研究テーマ

CT画像の空間分解能特性に基づいたバーチャル3D肺がん像によるCADの性能評価法および高度化に関する研究

メンバー紹介

教員:

和田眞一
大久保真樹
成田啓廣

大学院生
(修了および在籍者)

菅原秀賢
郷戸 允
Janaka C Marasinghe
吉田皓文
小林 元
大野 健
舟木 歩

研究背景

肺がん死亡は、日本におけるがん死亡率の中で最も高く、保健医療の重要な課題とされます。米国がん研究所(NCI)は、胸部レントゲン写真と低線量胸部CT検診の無作為化比較試験National Lung Screening rial(NLST)を実施し、2011年に低線量胸部CT検診が胸部レントゲン写真と比べ、20%の統計的有意な死亡率低減効果があることを示しました。この結果に基づき、米国では高危険群を対象とした肺がんCT検診に公的保険を適応することが2015年に公表されました。今後、肺がんCT検診が、肺がん死亡率低減のための有効な検診方法として普及することが期待されています。当研究グループでは、肺がんCT検診普及のための技術的課題を解決することに寄与する研究を進めています。

研究内容の紹介

肺がんCT検診では膨大な枚数の画像を読影・診断する必要があり、医師の負担が格段に重くなります。これを軽減するためにコンピュータ支援診断(CAD)システムが開発されています。既にいくつか市販されているシステムもあり、その主要な研究テーマはCADの“開発”から、“導入・実用化”への移行段階にあります。しかし、CADの性能はCT画像の画質に大きく依存するため、撮影条件や画像再構成条件によってはその性能が大きく低下する場合があります。撮影・再構成条件は各検診施設によって異なることから、CADの導入に際してはそれぞれの施設が個別にCADの性能を評価する必要があります。性能評価をするためには十分な症例を集めた多数の画像データ(肺結節症例画像データベース)が必要となりますが、各施設がそのようなデータベースを個々に構築することは現実的にはかなり困難です。そこで、当研究グループではCT画像の空間分解能特性に基づいた仮想肺内結節像“Virtual nodule”の開発を進めてきました(図1)。CT装置の空間分解能(Point spread function:PSF)を測定し(図1の下段左端)、それに基づいて3次元(3D)肺結節画像I(x,y,z)の算出を行います。この結節画像を検診で得られた胸部画像に融合しVirtual noduleとして生成します。図1に示すVirtual noduleは、実際の結節像(患者)の一例に類似した画像となっているのがわかります。

図1 Virtual noduleの生成。結節像(患者)の一例を右下端に示す。

Virtual noduleは各検診施設のCT装置の空間分解能および胸部画像を利用して生成され、様々な大きさや濃度を想定できることから、各施設に固有な肺結節症例画像データベースとしての構築が容易に行えます。これにより、撮影・画像再構成条件によって異なるCADの性能を各検診施設ごとに的確に評価できるようになります。このような方法論は、これまでにない新しい着眼点です。  Virtual noduleを利用して構築された肺結節症例画像データベースを用いてCADの性能評価を行った一例を図2に示します。図2の左のグラフは、結節径が4~8 mmのVirtual noduleについて自由応答受信者動作特性(Free response receiver operating characteristic:FROC)解析を行った結果です。結節の濃度は、肺野よりも300 HU高い値に設定しました(ΔCT=300 HU)。図2の右は、結節濃度ΔCTが200~400 HUのVirtual noduleそれぞれについてFROC解析を行った結果です。結節径は6 mmの設定です。

図2 Virtual noduleによるCAD性能評価の一例

図2の左のグラフから、実験で用いたCADシステムでは結節径が6 mm以上になると検出確率が高くなることがわかります。また、右のグラフから、結節濃度ΔCTが200 HUに低くなると、CADによる検出確率が大きく低下することがわかります。Virtual noduleを利用することによって、このような結節の大きさと濃度に対応したCADの検出性能を詳細に評価することが可能です。これは、従来のCAD性能評価法では実現が難しかったものです。

これからの展望

CADの性能や特性、およびその変化をエンドユーザが認識しておくことは重要であり、そのためにCADの品質保証(quality assurance:QA)は各検診施設において重要な意味を持ちます。当研究グループで開発を進めてきたVirtual noduleによるCADシステムの性能評価法は、CADの初期導入時の受入れ試験(acceptance test)やその後のQAにも利用できる手法と考えられます。肺がんの克服に向けCT検診およびCADの普及は緊急の課題であり、Virtual Noduleはそれに直結する有用な方法論となるものと期待しています。

研究業績

Marasinghe JC, Ohkubo M, Kobayashi H, Murao K, Matsumoto T, Sone S, Wada S: Feasible method to assess the performance of a lung cancer CT screening CAD system in clinical practice: dependence on nodule size and density. International Journal of Medical Physics, Clinical Engineering and Radiation Oncology, 2014, 3:107-16.

Kayugawa A, Ohkubo M, Wada S: Accurate determination of CT point-spread-function with high precision. J Appl Clin Med Phys. 2013 Jul 8;14(4):216-26.

Ohkubo M, Wada S, Kanai S, Ishikawa K, Marasinghe JC, Matsumoto T: Observer-independent nodule-detectability index for low-dose lung cancer screening CT: a pilot study. Radiol Phys Technol. 2013 Jul;6(2):492-9.

Ohno K, Ohkubo M, Marasinghe JC, Murao K, Matsumoto T, Wada S: Accuracy of lung nodule density on HRCT: analysis by PSF-based image simulation. J Appl Clin Med Phys. 2012 Nov 8;13(6):277-92.

Ohkubo M, Wada S, Kayugawa A, Matsumoto T, Murao K: Image filtering as an alternative to the application of a different reconstruction kernel in CT imaging: feasibility study in lung cancer screening. Med Phys. 2011 Jul;38(7):3915-23.

研究紹介(2014/05/30)

研究テーマ

当科で樹立した形質細胞様樹状細胞株を用いた抗腫瘍細胞免疫療法の開発

メンバー紹介

教員:

高橋 益廣

教授 高橋益廣
准教授 成田美和子

大学院生

内山孝由 (D2)
岩淵 南 (M2)
佐藤直哉 (M2)
岩谷俊平 (M1)
大岩恵理 (M1)
西澤幹則 (M1)

これまでの研究概要

樹状細胞は、免疫反応の最初のステップであるリンパ球への抗原提示を行う細 胞で、免疫応答の司令塔としての役割を担っています(図1)。
国内外で樹状細胞を用いた腫瘍に対する細胞免疫療法の臨床試験が行われ(図2)、最近、アメリカでは前立腺癌に対する樹状細胞療法が米国食品医薬品局により有効な治療法として認可されています。 しかし、血液中に存在する樹状細胞(図3)は極めて少数で、樹状細胞を用いた研究や治療を行うにはその調製に困難を伴います。

当研究室では、稀な病型である形質細胞様樹状細胞性白血病の患者から、樹状細胞の特徴を有し、かつナイーブT細胞に対する抗原提示能を有する細胞株 (PMDC05) を 2005 年に樹立しました(図4)。 この細胞株にがん抗原ペプチドをパルスし、健常人のリンパ球を刺激することにより、がん抗原特異的な細胞傷害性T細胞 (CTL) を誘導することができます(図 5)。
この樹状細胞株は必要なだけ十分量を増やして使うことができますので、我々はこの細胞株を用いて誘導したがん抗原特異的細胞傷害性T細胞を癌治療に応用できると考えています。

現在、同様な細胞株は世界で3つ樹立されていますが、細胞の性状が明らかになっている点および細胞培養に支持細胞やサイトカインが必要のない点から、当研究室で樹立した細胞株が 3 つのうちで最も臨床応用しやすい細胞と考えられています(表 1)。

我々は PMDC05 の抗原提示能を強める目的で、抗原提示関連分子 CD80(PMDC05 で発現が低い)の遺伝子をレトロウィルスベクターで導入した細胞株 PMDC11 を 2011 年に樹立しました。
PMDC11 は、CD80 に加えて HLA-DR 等の抗原提示関連分子の発現も亢進しており(図 6)、抗原提示能や抗原特異的細胞傷害性T細胞誘導能の増強が認められました。 このPMDC11は、リポポリサッカライド(細菌内毒素のため臨床的使用は困難)刺激により、さらに抗原提示能が増強することから、リポポリサッカライドの受容体であるToll 様受容体 4 (TLR4) を恒常的に活性化する constitutively active TLR4 (caTLR4)の遺伝子を導入した caTLR4-PMDC11 を 2012 年に樹立しました。 この細胞株はPMDC11 に比べ、抗原提示関連分子の発現、抗原提示能とも増強していることが確認されており、がんに対する細胞免疫療法への応用が期待できます。

これからの展望

(CD40L-PMDC11)も 2012 年に作成しました。この細胞は、細胞内もしくは 細胞間で CD40-CD40L 反応により活性化し、抗原提示能が高まることが想定 されることから、CD40L-PMDC11 を用いた抗腫瘍細胞免疫療法の検討も進行 中です。

PMDC11 細胞株の TAP2 遺伝子をジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)法に よりにより切断(ノックアウト)することにより、HLA による抗原提示がで きない細胞株を作成し、ついで HLA-A*24:02 もしくは A*02:01 等の遺伝子を 導入することにより、治療対象とする症例に有効で、かつアロ反応を生じな い細胞株を作成する準備中です。

このように作成した細胞株に、がん種毎に有効な腫瘍抗原を遺伝子導入し、 症例ごとに有効な樹状細胞株の製品を作成する計画をしています。

世界の免疫研究を支援するための細胞供与

PMDC05/11 に関しては特許を出願し、アメリカ国立衛生研究所(NIH)、ハーバード大学、カリフォルニア大学をはじめとして、広く国内外の大学、研究機関、企業の研究所に細胞を供与し、樹状細胞に関する免疫研究を支援するとともに、共同研究を行っています。

研究業績

Watanabe N, Narita M, Saito A, Yamahira A, Taniguchi T, Furukawa T, Yoshida T,Miyazawa T, Nashimoto M, Takahashi M. Induction of apoptosis of leukemic cells by TRUE gene silencing using small guide RNAs targeting the WT1 mRNA. Leuk Res. 2013;37:580-5.

Yamahira A, Narita M, Kayoko Ishii K, Jayathilake RMC, Iwabuchi M, Satoh N,Uchiyama T, Taniguchi T, Hashimoto S, Kasahara N, Faure E, Boganc B, Takizawa J,Sone H, Takahashi M. Enhancement of antigen presenting ability in the leukemicplasmacytoid dendritic cell line (PMDC05) by lentiviral vector-mediated transduction ofCD80 gene. Leuk Res 2012;36:1541-6.

Yamahira A, Narita M, Nakamura T, Watanabe N, Kaji M, Taniguchi T, Hashimoto S,Furukawa T, Toba K, Aizawa Y, Kuzushima K, Takahashi M. Generation ofantigen-specific cytotoxic T lymphocytes using a leukemic plasmacytoid dendritic cellline as antigen presenting cells. Leuk Res. 2011;35:793-799

Watanabe N, Narita M, Yamahira A, Nakamura T, Tochiki N, Saito A, Kaji M, HashimotoS, Furukawa T, Toba K, Fuse I, Aizawa Y, Takahashi M. Transformation of dendritic cellsfrom plasmacytoid to myeloid in a leukemic plasmacytoid dendritic cell line (PMDC05). Leuk Res. 2010;34:1517-24.

Narita M, Watanabe N, Yamahira A, Hashimoto S, Tochiki N, Saito A, Kaji M, NakamuraT, Furukawa T, Toba K, Fuse I, Aizawa Y, Takahashi M. A leukemic plasmacytoiddendritic cell line, PMDC05, with the ability to secrete IFN-a by stimulation via Toll-likereceptors and present antigens to naive T cells. Leuk Res. 2009;33:1224-1232.

Narita M, Kuroha T, Watanabe N, Hashimoto S, Tsuchiyama J, Tochiki N, Saito A,SatohN, Furukawa T, Toba K, Fuse I, Aizawa Y, Shinada S, Takahashi M. PlasmacytoidDendritic Cell Leukemia with Potent Antigen Presenting Ability. Acta Haematol.2008;120:91-99